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ネットで暴走する医師たち

ネットで暴走する医師たち

ネットで暴走する医師たち

医療訴訟の問題に関してWeb上では医師擁護の意見をよく見るので異なる意見も読んでみようかと思って購入.

紹介されているのは以下の3つの事件.

この3つの医療訴訟そのものに関しては,患者側が不利なように思えるなあ.実際の裁判でもその方向で進んでいるし,この本を読んでも患者が勝訴するという根拠は見つからなかった.また,大野病院事件の話では,遺族の医師に対する疑惑が強すぎてちょっとついていけない気がした.医者の本当に細かい判断までも問題にしているようで,そこを疑っていくときりがないだろうなと思える.

しかし,著者の論点はどちらかというと,医師がネット上で患者を誹謗中傷する発言を行っていたり,根拠のない批判をしているの点にあるようだ.批判されているのはブロガーだったりねらーだったり,あと,知らなかったのだがm3という医療関係の医者限定会員制掲示板のユーザだったりする.

そもそもそういう批判をしているユーザがどれくらいいるのかなという疑問があるのだが,それに関してはあまり分析されていない.一部の医者がイタイだけなら無視すればいいだろうし.

ただ,ウラの取れていない情報に基づいて批判すべきではないというのはその通りだと思う.3つの訴訟に関しては結構m3や2chブログ界隈でデマが広まったそうだ.著者はそれについて詳しく取材している.

例えば,大淀病院事件に関しては患者のカルテがm3に流出したのだが,その流出経路がマスコミからではないかという噂が広まった.しかし,遺族が告訴した結果,警察が調査を行った.そして,最初にm3に流出した人が判明し,遺族に謝罪することになった.そこで,入手経路は明かされていないがマスコミではないことがはっきりしたそうである.さらに,マスコミが遺族を唆して訴訟に踏み切らせたというような噂もあるが,これもこの本の中で遺族本人の口で否定されているのでデマであるようだ.

細かいところを読むと突っ込みどころも多いのだが,全体的にみると遺族や関係者への取材がよくされていて情報源としては良さそう.