- 作者: 文春新書編集部
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/08
- メディア: 新書
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「希望格差社会」の山田昌弘や「日本の不平等」の大竹文雄など多様な論者の論文を集めたもの.データから事実を推測するタイプの人や精神論を言い出す人など多様なタイプの人が書いている.
個人的には,大竹文雄と白波瀬佐和子の論文がしっくりきていた気がする.前者は格差が高齢化社会によるものであるもの指摘し,後者は格差が誰の誰に対する格差なのかによって非常に多様であることを示してくれる.あと,竹中平蔵など当時の政府の人間がどう考えていたのかも分かって興味深い.山田昌弘は読んだこと無かったのだが,戦後日本社会('50〜'80ぐらい?)をあまりに賛美しすぎていて共感できない.当時は努力すれば階層が上がったが,現在は努力しても階層が上がらないと言っているのだが,今も昔も努力したからと言って必ずしも報われないのは同じだろう.程度の差があるのかもしれないが,それを示す客観的なデータはなかった.
もっとひどいと思ったのは.森永卓郎と二神能基の対談.二神という人は若者に年収100万ぐらいの生活を薦めて老いた親にその生活費を補助させようとしている.そんなこと薦めていたら,本人の年収が低いわけだから格差が広がるばかりで,政府に対して格差が拡大していると批判する資格はないだろう.それとも,みんな貧乏になったら格差が0になると言いたいのかなあ.努力してもうまくいかなかった人のために税金が使われるのは構わないのだが,スローライフとか言ってちゃんと働く意欲のない人たちのために税金を払いたくはないのだが.