- 作者: 蜷川真夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/02/19
- メディア: 新書
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タイトルは内容とあんまり関係なかった。j-castの代表者である蜷川真夫氏がj-castやメディアの今後について語るという内容。
j-castニュースに対する自分のイメージはワイドショーや週刊誌をweb上置いたものというもので、情報源としての信頼性はゼロに近い。しかし、著者は、そもそもそういう方向性を狙って設立したということで肯定的に見ている。また、取材が足りないという批判に対して、そんなにお金をかけていないから無理だという愚痴を言っているし、一次情報の取得は他のメディアの仕事だとも…。そういう考え方はアリだと思うしビジネス的には正しそう。しかし、あからさまなデマをチェックできないのは費用だけでなく、リテラシーの問題もありそうだが。ただ、自分たちがやっているのはジャーナリズムではないと明言しており、一部の週刊誌の記者のように変にジャーナリストぶらないのは好感が持てる。
意外だったのは、j-castニュースのコメント欄を重要視しているという点。コメント欄での議論がユーザに新たな視点をもたらすと考えているらしい。しかし、j-castニュースのページをみてもあまりコメント欄にアクセスしやすいとも思えないんだけどなあ。あと、コメントによって情報の信頼性が高まるとしているのだけども、あまり有益なコメントが書かれているとも思えない。本書に書かれている範囲では2chと変わらないし。貶める必要もないけど、持ち上げる必要もない程度じゃないかな
ビジネスとしては扇情的な見出しでユーザを惹きつけたり、題材がワイドショー的なるのは、それでアクセスするユーザが多いのだから正しいのだろうな。同じネット発のメディアだったが、休刊/閉鎖してしまったjanjanやオーマイニュースとの違いはその点があるのかもしれない。ただ、janjanが月間2000万PVに対して、本書によるとj-castが月間4000万PVなのでそこまで大きな差ががあるとも思えない。広告の使い方や出費の面でも違いがありそうだなと。
新聞などの既存のメディアの今後については、規模は小さくなるが、生き残るだろうという予想をしている。あまり面白みはないのだが、堅実な意見だと思われる。
結局j-castの手法は正しいとは思うものの、既存のメディアが衰退し、ネット上ではj-castタイプのメディアしか生き残らなかったら、全体的なメディアの質は落ちそうな気がするのが心配。既存のメディアの質が高かったかと言われると、全く肯定しないのだけども、今後メディアの質が向上するという予感はしない