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ベーシック・インカム入門

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

ベーシック・インカムという言葉をよく目にするのでちょっと読んでみた.

ベーシック・インカムとはアイルランド政府の「ベーシック・インカム白書」によると以下のように定義される.

  • 個人に対してどのような状況におかれているかに関わりなく無条件に給付される
  • ベーシック・インカム給付は課税されずそれ以外の所得はすべて課税される
  • 望ましい給付水準は,尊厳を持って生き,実際のの生活において選択肢を保証するものでなくてはならない.

無条件という部分が既存の資力調査を必要とする生活保護とは異なっている.

こういう仕組みが導入されれば,経済格差が改善され貧困者を救うことができるというのはその通りだと思うのだけども,やはりどうやってお金を確保するのかなというのが気になる.だけども,この本では財源について「財源を問う議論は単なる恫喝」と言って議論を避けている.

他の問題(核武装や銀行への公的資金投入)については財源が問われないじゃないかと言うのだけども,核武装はコストがかかるので割に合わないという批判にさらされているし,銀行への公的資金投入も結構叩かれてたような.そもそもあらゆる政策は財源についても論じなければならないものだと思うのだが,逆の方向に行ってしまっている.

また,ベーシック・インカムを月5万と考えても5万*12ヶ月*1億2千万人で約70兆円で,他の政策とは桁違いなお金が必要になる.だから財源に関する議論は必須じゃないのかなあ.税制を根本的に変えないといけないぐらいの額だと思うんだけども.あと,月いくらにすべきかによって,現実性や妥当性が異なるので,賛成者の数もそれに合わせて変化がありそう.どれくらいの額にして,財源をどうすれば現実に運用可能であるというような議論を深めてほしかった.

メインの話はベーシックインカムと女性運動との関わり合いについてだったので,その辺りについて関心のある人ならば面白いかもしれないが,現実社会に適用可能かというのが知りたかったのであまり満足できなかった.