てきとうなメモ

本の感想とか技術メモとか

安全。でも、安心できない…

安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学 (ちくま新書)

安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学 (ちくま新書)

読んだ。安全がなぜ安心につながらないかを説明している。

現代社会ではリスク管理を他者に依存しており、自分自身が安全性を熟知しているわけではない。そのため、「安全」だと言われても本当に安全かどうか判別できず疑ってしまう。そこで、相手が信頼出来るかどうかで安心できるかどうかが決まってくる。

相手を信じるかどうかのポイントの一つは相手の能力の高さであるが、それが全てではない。
自分が関心のある分野だったら自分で考えたりするのだが、それでも自分と主要な価値観を同じくしている人を信じる。例えば、環境問題ならば、環境保全を重視している人は、経済を重視している人を信じない。関心の低いものの場合は、相手がリスク管理に真面目に取り組んでいるかどうかで判断される。

という感じで著者は、能力があるのは前提のもとで、真面目で取り組んでいることを伝える努力をすべきだと主張しているようである。価値観が異なる点に関してはどうしようもないだろうし。安倍元総理の年金問題を例に出して、本当に年金問題に関して怒っているとアピールすべきだったと言っている。しかし、それをやったところで当時のワイドショーはパフォーマンスとみなしていただろうし、大抵の人はテレビ経由で情報にアクセスして、ワイドショーをそのまま鵜呑みにしそうだし…メディアの問題も扱った方がよかったんじゃないかな。実際に真面目に取り組んでいるかどうかだけではなく、他者にそのように認識されなければ意味が無いというのはそのとおりで、そうした情報公開とかには賛成かな。

いろいろ考えてみるに、やはりリスク管理者そのものの問題もあるけど、そこが発表した情報を伝えるメディアや情報を受取る一般人の問題も大きいかなと思う。メディアには正確な情報を流して欲しいし、一般人に情報を分別する能力をつける教育も重要かなと。まあ、この本に関してはリスク管理者がどうするかに主眼を置いているので、その話ばっかりになってしまうのは仕方ないのだけども。