てきとうなメモ

本の感想とか技術メモとか

電脳文化と漢字のゆくえ

1998年に出版されたJIS漢字批判の本。といっても、批判一辺倒というわけではなく、小林龍生氏や加藤重信氏などJIS擁護派の方も書いているので、全体としてはそれなりにバランスはとれているんじゃないかな。

メインは作家たちによるJIS批判なのだけども、あんまりまともな批判になっていない。「漢字が足りない」「漢字を全部のせろ」と言っているだけで、全部というのが何をさしているのかわからないし、異体字の管理や漢字追加のプロセスなど、どうやってその漢字を管理していくのかも明確ではない。

あと、古い書物を原文の漢字のまま電子化したいという需要は自分にはあまりよく理解できていない。電子化の一番のメリットは検索性であるのだが、現在全く使われていないような異体字をそのまま保存してしまうと、その文字を入力して検索しなくてはならず、ユーザはその文字を知っていなければならなくなる。正規化して保存すればこの方法は避けられるが、その異体字の管理をどうするのかという話になる。だが、やはりこれについては具体的に述べられていない。

あと、メモ的なもの

点字文字コード

6点漢字(6点式点字による漢字)の説明。とくにJIS漢字批判とは関係なく、ちょっと異色だった。6点漢字は6点3マスで構成され、最初の2マスが音を表し、最後の1マスが訓か部首を表す。点字は人間が解釈しなければならないので、わかりやすく覚えやすいようにコード化しないといけないという点が面白い。

文字コード問題と国語国字問題

この人か。78JISを第一水準、83JISを第二水準と書いてしまった人は。書き間違いというレベルではなく、本当に誤解しているっぽい書き方だった。

日本人と漢字世界

本の趣旨と異なり、白川博士の発言が面白い

魯迅も、... 我々のために漢字を犠牲にするか、漢字のために我々を犠牲にするかと問われるならば、我々は漢字を犠牲にしなければならないと、こう言っている。
...
したがいまして、日本の現在の国字政策が基本的に誤っているとは考えておらないのです。

まあ、地名などは、あんまり妙な文字はなるべく一般化した方がいいと思いますけれど、地名そのものは、残していただく方がいい

(漢字は何字知っておけばいいのかという質問に対して)
だから、社会生活に必要なものとしては、まず、七〇〇〇〜八〇〇〇もあれば十分で、... 一万なら、必要な字を網羅できると思います。