てきとうなメモ

本の感想とか技術メモとか

ナイチンゲール 神話と真実

ナイチンゲール 神話と真実

ナイチンゲール 神話と真実

多くの伝記によると、ナイチンゲールは、当時あまり一般的ではなかった衛生環境の悪さが病気の感染率を上げるという考えから、病院の衛生環境を改善することにより死亡率を下げたということになっているらしい。

しかし、このような考えをするようになったのはクリミア戦争が終結した後のことで、戦前はコレラ以外の病気に関してはそのような考えを持っておらず、物資不足で病院の施設的な環境が悪いためや栄養不足のためだと認識していた。そして野戦病院に衛生環境を改善する委員団を送ったのは、ナイチンゲールではなくパーマストン首相であった。

クリミア戦争が終結し、ナイチンゲールはパーマストンや陸軍大臣パンミュアから依頼されたクリミア戦争の死者を調査する極秘報告書の作成に着手する。そして、それらを報告し審査する王立委員会が開催されることになった。しかし、ナイチンゲールは極秘報告書を作成するうちに、タロックの友人である統計学者ウィリアム・ファーの協力により、兵士の死亡率の高さが衛生環境によるものだと気づく。皮肉なことに、彼女が管理していたスクタリの野戦病院は特に衛生環境が悪く、死亡率も高かったことがわかった。

ナイチンゲールは、衛生環境を十分に管理しなかったのは、友人でもあり、現政府の一員であり、王立委員会の議長でもあるハーバートの責任であるとした。また、同様に当時スクタリの野戦病院を管理していた自分にも責任があるとした。しかし、ハーバートの説得により、委員会ではハーバートを含めた政府の責任を問わないことになる……

看護婦で多くの兵士を救った人というイメージしかなかったので、自分の管理していた病院が衛生環境がひどく悪くて多くの兵士を死なせてしまったというのは結構衝撃的だったな。

あと、図説偽科学・珍学説読本でナイチンゲールが細菌説を支持していなかったという説はこの本では否定されている。ジョン・サイモンとの議論で、接触伝染(直接触れることにより病気が移る)ではなく感染(空気感染などを含む)が適切であると言っているのを切り取られたらしい。